はじめに
日本時間で2019年6月11日(火)に開催されていたCisco Liveにて、2020年2月24日よりシスコ技術者認定が大幅改定されると発表がありました。
特に、Routing and Switchingのトラックにはとんでもない変化が!今回は、そんなシスコ技術者認定について現在わかっている情報と、僕の意見を述べさせていただこうと思います。
シスコ技術者認定の大幅改定!
トラックの形態が大きく変更!
この記事を執筆している2019年6月11日(火)現在では、シスコ技術者認定として以下のトラックが設けられています。
エントリー資格として共通のCCENTがあり、各トラックごとにCCNA、CCNP、CCIEが設けられています。
それに比べ、2020年2月24日以降は以下のように変わります。
パッと見てわかる大きな変更点は、Routing and Switchingが廃止され、Enterpriseとなったことでしょうか。
上記の図で全体像を掴んでいただいたところで、次にレベルごとの紹介をしていきます。
CCNETが廃止!CCTに!
まず、CCENTという資格が廃止になりCCTという資格が新しく設けられました。現在CCTにはRouting and SwitchingとData Centerトラックが設けられています。
CCTはCisco Certified Technicianの略称で、機器のサポートやメンテナンス、オペレーションができるスキルを求められているようです。
CCNAのトラックが1つに統合!
以前まではCCNA Routing and SwitchingやSecurity、Wirelessとトラックが分かれていましたが、CCNAという1つの認定資格にまとめられることになりました。
といっても、Blueprint(試験範囲)を確認した限りでは全てのトラックが集約されている!という印象ではなく、現在のCCNA Routing and SwitchingにAutomation and Programmabilityが追加されたようなイメージです。
Automation and Programmabilityの割合は10%なので、そこまで試験を難化させているわけではありませんが、シスコが世のインフラエンジニアに求める能力が表されていると思います。
CCNPが2科目に!ただし、内容はCCIEと同じ?!
Routing and Switchingというトラックが廃止され、Enterpriseになったことははじめに紹介しましたが、認定条件も大きく変化しています。
現在のCCNP Routing and Switchingでは、Switch, Route, Trouble shootingという3つの試験に合格することで認定されていました。
しかし、改定以降はCore Examと呼ばれている300-401 ENCORと、任意の試験を1つ合格することで、CCNP Enterpriseに認定されます。
ここで驚くべき点が、Core Examと定義されている300-401 ENCORは、なんとCCIE Enterpriseの筆記試験と同じ試験です。
Blueprintを確認すると、現在のCCIE Routing and Switchingの筆記試験とは大きく異なり、試験範囲もそこまで広くはありません。
しかし、CCIE Enterpriseの前提試験にもなっていることから、簡易化されたわけではないと推定できます。実際にAutomation and Programmabilityの割合は15%とCCNAに比べて5%増えており、SD-WANやSD-Accessといった馴染みのない技術ががっつりと登場します。
そのため、難易度はともかく、学習ハードルは大きく上がったと見てよいでしょう。
また、個人的な予想ですが、CCIEの筆記試験と同じであれば日本語での試験が実施されない可能性が高いのでは…と感じています。CCIEの取得を見越されている方であれば英語が読めることは必須ですが、CCNPに取り組まれている方は英語が読めない方のほうが多いイメージですので、この辺りも学習ハードルを左右してきそうです。
CCIEの試験内容が大きく変更!ラボ試験なのに筆記問題が3時間!
最後にCCIEの変更内容をお伝えします。CCIEは筆記試験とラボ試験の2つの試験に合格し、初めて認定されますが、筆記試験は前述した通りCCNP Enterpriseと同じ試験です。そのため、CCNP Enterpriseを取得していれば実質免除といった扱いになると思われます。
続いてラボ試験。現在のラボ試験はトラックにもよりますが、Routing and SwitchingではTrouble shooting(1.5-2.5h), Diagnostics(0.5h), Configuration(5-6h)という3つのセクション(合計8時間)で構成されていました。
Trouble shootingとConfigurationは実際に機器を操作してトラブルを解決したり、ネットワークを構築する問題、Diagnosticsはメールや構成図、機器のログなどを元に発生しているトラブルの原因を選択肢から答える問題です。
改定後のCCIEでは、Module1(Design)とModule2(Deploy/Operate/Optimize)という2つのセクションで構成されます。これは、全トラック共通です。
Designは現在のDiagnosticsと同じのような問題ですが、試験時間が3時間固定です。筆記試験がCCNP Enterpriseと同様であることから、Module1(Design)が事実上の筆記試験といった立て付けになるのではないかと思います。
そして、Module2(Deploy/Operate/Optimize)は機器を実際に操作するセクションです。こちらも5時間固定で、Deployが現在のTrouble shootingとConfiguration、OperateとOptimizeはNetwork health monitoringやreduce operate costといった記載があることから、Pythonを使ったAutomationやProgrammabilityを実現させられることが予想されます。
また、CCNPの紹介でも記載しましたが、SD-AccessやSD-WANはあまりまだ馴染みのない技術であり、個人で検証環境を準備することはほぼ不可能です。ラボ試験では恐らく機器を操作させられるため、座学だけのCCNAやCCNPと比べて学習ハードルが更に上がります。
そのため、現状ではシスコのゴールドパートナーでテクニカルサポートを務めていて、SD-AccessやSD-WANを評価できるような環境にいるか、シスコのパートナーアカウントを保有しており、Cisco dCloudが使用できる環境でなければ学習すること自体が困難になるのではないかと予想します。
さいごに
今回の改訂全体を通して…
・シスコのSDN製品に関するスキルをかなり求められるようになった
・Pythonの理解が必須となった
・試験範囲が単純に増えた
だと僕は感じました。
特にSDN製品に関しては、今後シスコがSubscriptionビジネスにシフトしていくにあたり、これらのスキルを保有しているエンジニアをより必要としている といった背景を感じます。
そのため、試験範囲も単純に増え、学習ハードルも上がり、取得難易度も恐らく高まりますが、逆に言えばこれからのエンジニアにはこれらのスキルが求められる ということです。もちろんSD-Accessとか日本で流行るのか…といった思いはあるかもしれませんが、流行ってから学ぶことより、いち早く新しい技術をキャッチアップできることがエンジニアとして求められる姿勢であり、資格を通じて自身の市場価値を高める本当の姿ではないかと僕は思います。
そのため、現在CCIE R&Sにすでに挑戦している!という方は、結果が先延ばしにならないよう駆け込み受験を頑張っていただきたいですが、その他の方は新しいスキルを学ぶ良いきっかけになったとリフレーミングして、取り組んでみてはいかがかな と思います。
僕も現在はCCIE R&S取得の当初と予定が変わって、CCIE Data Centerに挑戦する予定ですので、AutomationやProgrammabilityを学ぶべくPythonの勉強を始めていきます。
皆さんも、改定をマイナスに捉えずに、成長のきっかけとして活かしてみてください!