前回、MACアドレスが「同一ネットワーク内で機器を識別するための物理的な番号」であり、フレームを送信するには宛先MACアドレスが必要になると学びました。
では、そのMACアドレスをもとに、実際に誰がフレームを転送しているのでしょうか。今回はその役割を担う スイッチ(Switch) の動作を学びます。
前回学んだ通り、MACアドレスは機器に紐づいた48bitの物理的な識別番号であり、ネットワークインターフェース層で扱われるフレームのヘッダには、送信元・宛先それぞれのMACアドレスが格納されます。

スイッチは自身の各ポートにどの機器(MACアドレス)が接続されているかを MACアドレステーブル という対応表で管理しています。
Cisco IOS-XE では MACアドレステーブルは以下のように表示されます。詳細は今後改めて学習しますので、この時点で内容は理解せず問題ないです。
SW1#show mac address-table
Mac Address Table
-------------------------------------------
Vlan Mac Address Type Ports
---- ----------- -------- -----
1 aabb.cc00.0600 DYNAMIC Et0/0
1 aabb.cc00.0700 DYNAMIC Et0/1
Total Mac Addresses for this criterion: 2
ただし、このテーブルは最初から用意されているわけではなく、スイッチが実際に流れてきたフレームを見ながら、動的に学習していくという点が重要です。
具体的には、あるポートからフレームが届くと、スイッチはそのフレームの 送信元MACアドレス を見て、「このMACアドレスは、このポートの先にいる」とMACアドレステーブルに記録します。この動作を学習(Learning) と呼びます。

フレーム転送の判断を説明する前に、ここで ブロードキャストアドレス という用語を押さえておきましょう。
前回学んだ通り、MACアドレスは機器ごとに割り当てられた 48bitの一意な識別番号でした。
これに対しブロードキャストアドレス(FF:FF:FF:FF:FF:FF) は、特定の1台の機器を指すものではなく、「同一ネットワーク内の全機器」を意味する特別な宛先MACアドレス です。
宛先MACアドレスにこのブロードキャストアドレスが設定されたフレームは、送信元と同じネットワークに属する すべての機器が自分宛てのフレームとして受け取ることになります。
1台1台に個別のフレームを送る代わりに、「全員に一斉に届けたい」ときに使われる仕組みとイメージしておいてください。
以前学んだ IPアドレスのブロードキャストアドレス(例:192.168.1.0/24における192.168.1.255)と、ここで説明しているMACアドレスのブロードキャストアドレスは、どちらも「そのネットワーク内の全機器宛て」を意味する点は共通していますが、扱う階層(IPアドレス=インターネット層、MACアドレス=ネットワークインターフェース層)が異なる別々の情報 です。
混同しないよう注意してください。
スイッチはフレームを受け取ると、宛先MACアドレスをもとに以下のいずれかの動作を行います。
フォワーディング(Forwarding):
宛先MACアドレスがMACアドレステーブルに登録済みの場合、該当するポートにのみフレームを転送する。

フラッディング(Flooding):
宛先MACアドレスが未学習(テーブルに存在しない)、または宛先がブロードキャストアドレスの場合、受信したポート以外の全ポートにフレームをコピーして転送する。


ここで特に重要なのがフラッディング です。宛先がブロードキャストアドレスであるフレームを受け取ると、スイッチはそのフレームを受信ポート以外の全ポートに転送します。
次回学ぶ ARP は、まさにこの「ブロードキャスト=スイッチによって全ポートにフラッディングされる」という性質を利用した仕組みです。
上記の画像にも記載のある通り、スイッチは自身宛てではないフレームを転送しますが、IPアドレスを持つネットワーク機器は自分宛以外のフレームを破棄します。
ブロードキャストアドレス (ffff.ffff.ffff) の場合は特殊で、全員が受け取ることができます。
同一ネットワーク内の全機器に送信される通信の宛先範囲のことを ブロードキャストドメイン と呼びます。
スイッチは基本的に受信したブロードキャストフレームを自身の全ポートにフラッディングするため、1台のスイッチに接続されたポートは原則としてすべて同じブロードキャストドメインに属することになります。
ブロードキャストドメインを分割する(=1台のスイッチ内であっても、通信範囲を分ける)ための仕組みとして VLAN(Virtual LAN) があります。
スイッチのポートは工場出荷時の状態(デフォルト)で、すべて VLAN1 という1つのグループに所属しています。
本記事で説明した「1台のスイッチに接続されたポートは、原則として同じブロードキャストドメインに属する」という動作は、正確には「デフォルトですべてのポートが同じVLAN(VLAN1)に所属しているため、その中でブロードキャストが行き渡る」という仕組みによるものです。

このVLANの割り当てをポートごとに変更することで、1台のスイッチの中でもブロードキャストドメインを分割できます。

次回はこのスイッチのフラッディングの仕組みを利用して、IPアドレスからMACアドレスを解決する ARP を学びます。
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