OSI参照モデル(7階層)の各層の役割を理解する
TCP/IPモデル(4階層)の各層の役割を理解する
OSI参照モデルと TCP/IPモデルの対応関係を理解する
現在の通信で実際に使われているのは TCP/IPモデルであり、OSI参照モデルはあくまで概念/用語として残っていることを理解する
通信は「階層(レイヤー)」に従って処理されているという考え方を身につける
前回、機器同士が通信するには「共通のルール(プロトコル)」が必要だと説明しました。今回は、そのルールを整理するための2つの代表的な「モデル(考え方の枠組み)」を学びます。
いきなり技術の話に入る前に、身近な例で考えてみましょう。
たとえば、ネット通販で何かを注文したとします。この注文が手元に届くまでには、実にたくさんの人や部署が関わっています。

このとき、梱包担当の人は「この荷物がどのトラックに乗るか」まで考える必要はありませんし、配送担当の人も「箱の中に何が入っているか」を細かく気にする必要はありません。
それぞれが自分の役割だけに集中し、前工程から受け取ったものを決められた形で次の工程に渡していくという仕組みになっているからこそ、この一連の流れは効率よく、かつ確実に回っています。
もし「注文受付から配達まで、すべてを1人でこなさなければならない」というルールだったらどうでしょうか。作業は非効率になりますし、途中で何かトラブルが起きたときに、どの工程が原因かを特定するのも難しくなってしまいます。

通信の世界でもこれとまったく同じ考え方が使われています。
通信を1つの塊として捉えてしまうと
「宛先を決める処理」
「データを壊れずに届ける処理」
「電気信号に変換する処理」
など、性質の異なる処理がすべて混ざってしまい、理解も設計も難しくなります。

そこで、通信に必要な処理を先ほどの配送の例のように 役割ごとに階層(レイヤー) に分割し、「各層は自分の役割だけに集中し、他の層のことは意識しなくてよい」という設計にしたのが、OSI参照モデルと TCP/IPモデルです。
この考え方により、たとえば「Webブラウザを作る人」は下位層(電気信号やケーブルの違いなど)を意識する必要がなくなり、「スイッチを作る人」は上位層(アプリケーションの中身)を意識する必要がなくなります。
役割を分担することで、世界中の異なるベンダーが、それぞれ得意な層の機器・ソフトウェアだけを開発できるようになっているわけです。

OSI参照モデル(OSI Reference Model) は、国際標準化機関である ISO が策定した、通信を7つの階層に分割するモデルです。

「上位層に行くほど人間・アプリケーションに近い処理、下位層に行くほど機械・信号に近い処理」とイメージしておくと覚えやすいです。
TCP/IPモデル(TCP/IP Model) は、実際にインターネットで使われている TCP/IP プロトコル群の構造をもとに整理された、4階層のモデルです。

また、OSI 参照モデルと TCP/IPモデルは以下のように対応しています。

ここが今回、特にお伝えしたいポイントです。
OSI参照モデルは ISO によって、通信の枠組みを厳密に標準化することを目的に策定されたモデルです。一方 TCP/IP は、それより先に実運用の中で発展してきたプロトコル群であり、すでに多くのネットワークで実際に動いていました。
OSI に準拠した通信プロトコル自体(いわゆる OSIプロトコルスタック)も策定・実装が試みられましたが、仕様が複雑であったことなどから実装や普及が進みにくく、その間に TCP/IP が実運用の世界で広く採用され、事実上の標準(デファクトスタンダード)としての地位を確立していきました。
現在、実際にインターネットやほとんどの企業ネットワークで動いているプロトコルは TCP/IP です。 OSI参照モデルに完全準拠したプロトコルスタックが実運用で広く使われているわけではありません。
ここが初心者がつまずきやすいポイントです。「実際に使われていないなら学ぶ意味がないのでは?」と感じるかもしれませんが、そうではありません。
OSI参照モデルは、「層」という概念とその呼び方(用語) が、現在のネットワーク業界の共通言語として定着しています。実務やCCNA試験でも、以下のような表現が当たり前のように使われます。
これらの「L2」「L3」「L4」「L7」という表現は、すべて OSI参照モデルの層番号に由来しています。TCP/IPモデルは4階層しかないため、「トランスポート層の中でも、ポート番号だけを見ているのか、アプリケーションの中身まで見ているのか」といった細かい粒度の区別をする際には、OSI参照モデルの層番号のほうが便利なのです。
つまり、
という役割分担が、現在のネットワーク業界では定着している、と理解しておくと整理しやすいです。本シリーズでも、ハンズオンの説明自体は TCP/IPモデルの階層構造に沿って進めますが、機器やプロトコルを指すときには「L2スイッチ」「L3情報」といった OSI参照モデル由来の用語を適宜使用します。
次回はTCP/IPモデルのインターネット層にあたる 「IPとサブネッティング」 を扱います。IPアドレスの構造を理解し、ネットワークを分割する(サブネッティングする)考え方を、実際に手を動かしながら学んでいきます。
ログインすると、進捗を保存できます。
← ロードマップ に戻る